鶏卵生産におけるサルモネラ汚染防止について

「サルモネラ感染防止のマニュアル」

鶏卵生産現場におけるSE汚染の仕組み

生産現場でも「持ち込まない」「増やさない」「やっつける」の3原則が重要です。

SEはどこから来るのか?
 養鶏場を取りまく環境には、常にSEを含むサルモネラ汚染の危険が存在します。よく知られているように、ネズミ、ハエ、野鳥をはじめ、導入ヒナ、餌は重要なサルモネラ汚染源となります。しかし、もっと注意しておかなければならないのは鶏舎や設備が汚染することと、その汚染が継続することです。さらに、見かけは何の変化もないサルモネラ汚染鶏が鶏舎内に存在することです。最近、日本養鶏協会で採卵養鶏場204農場を対象にサルモネラ汚染状況調査をしたところ、54農場(26.5%)から何らかのサルモネラが検出されました。幸いSEが属する血清型がみられたのは1農場だけでしたが、48農場(23.5%)では、鶏舎内の「ほこり」からサルモネラが検出されました。


SEはどこで増えるのか?
 先にも述べたとおり、サルモネラは基本的に増殖力が旺盛で、大した栄養がなくても、温度と水分さえあれば増殖することができます。産卵機能を回復させるために実施する給餌制限(強制換羽)は、業界にとって重要な手法の一つですが、この方法は同時に鶏の免疫機能の低下や消化管細菌叢に大きな変化を引き起こします。結果的に、給餌を制限されてストレス状態にある産卵鶏では、SE感染のリスクや産出卵のSE汚染のリスクが高くなるといわれています。
  次に、日本養鶏協会が研究機関に依頼して実施した試験成績の一部を示します。
 図1.に示したように、産卵鶏にSEを経口投与すると直後にはほとんどの鶏のクロアカからSEが検出されますが、2週間もすると菌の検出率は明らかに下がります。この時に給餌制限ストレスを与えるとクロアカからのSE検出率が再び上昇します。また、菌数が数えられるほど多くのSEが検出される例もみられるようになります。
 SEは、糞便やクロアカだけでなく、産出卵からも検出され、さらに今回の試験ではタマゴの中身からもSEが検出されました。
  これらの結果から、養鶏場でも同じような状態が起きることが想像されます。


SEによるタマゴの汚染ルート?
 すでによく知られるようになりましたが、鶏卵のSE汚染経路は大きく分けて2つあります。卵が作られる途中の卵巣あるいは卵管でSEに汚染されるイン・エッグ型と、卵殻ができ上がってから殻に付着したSEが卵殻を通って卵内に侵入するオン・エッグ型があります。温度などの保存の条件によっては一定期間の後に急激に増殖し始めます。
  先に述べた試験では、産出卵についても調べており、給餌制限を中止した後ではタマゴの外だけでなく中からもSEが検出されました。もしこれが養鶏場で起これば汚染したタマゴが流通に乗ってしまいます。




 
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