鶏卵生産におけるサルモネラ汚染防止について

「サルモネラ感染防止のマニュアル」

鶏卵生産におけるSE汚染防止対策:ワクチンのすすめ

これまでの対策は?
 これまで実に多くの[対策指針]が出されてきました。最近の代表的なものとして、農林水産省から出された「採卵鶏農場におけるサルモネラ衛生対策指針」や「鶏卵のサルモネラ総合対策指針」があります。ここではその要約を述べますので、詳細は巻末に紹介したホームページを参照してください。
1.農場への侵入防止:   
 ・ 施設・設備への関係者、動物、車両の侵入禁止や制限
 ・ 外来者の立ち入り禁止や制限
 ・ 導入ヒナの衛生管理
 ・ 飼料および飲水の衛生管理
2.農場の衛生管理
 ・ 飼養にともなう衛生管理(とくに強制換羽による鶏のサルモネラに対する感受性の増強には注意)
 ・ 媒介動物の駆除
 ・ 鶏舎の消毒
 ・ 集卵時の衛生管理
3.定期的なモニタリング衛生検査
4.陽性例が出た場合の対策

 基本的に、「持ち込まない」「増やさない」「やっつける」の3原則が生きています。結論を言えば、一つの方法で完全なSE対策はないということです。「考えられることをすべてやる」ことが唯一最良の方法だといえます。
  1990年代に猛威を振るったSE食中毒患者数は、2000年になって下降傾向にあり、生産者の努力、行政の指導、消費者の注意などが効果的に働き始めていると考えられます。SE汚染を限りなくゼロに近づけるために今後さらに何をすべきかを考える必要があります。

SEワクチンのすすめ!
 これまで、SEワクチンのタマゴ汚染防止効果は十分には評価されてきませんでした。ウイルスワクチンには明らかな感染防止効果がみられるのに対し、細菌感染はウイルス感染よりはるかに複雑ですから、細菌ワクチンの感染防止効果は分かりにくい場合が多いようです。

SEワクチンの効果を確認するための試験
 前述した産卵鶏のSE感染試験では、ワクチンを接種した鶏群を同時に試験しましたので、改めて、その手順と結果を述べます。
試験手順
1. ワクチン非接種の300~400日齢白色レグホーン種メスを10羽導入し、
  同時に別の養鶏場からワクチン接種済の鶏を10羽導入した。
2. SEを経口投与し、2週間後から約30%体重減まで給餌制限を実施した。
3. 給餌再開後、産卵率が50%に回復するまでSE感染の様子を観察した。
4. この実験を5回繰り返して結果をまとめた。
5. 血液中のSE抗体を調べて、両群を比較した。

試験結果
 





別試験においてもワクチン効果を証明
 次に、絶餌によるストレスを与えた後でSEを投与した試験を紹介します。ここでは試験羽数を増やして、剖検時に肝臓、脾臓、卵巣、卵管からのSE検出率をみました。
試験手順
1. 同一日齢のワクチン非接種および接種済みの白色レグホーン種、
  またはブラウン種を導入した。
2. 給餌制限を10日間実施した。
3. 給餌制限開始後、7日目または8日目にSEを約105/羽経口投与(攻撃)した。
4.【試験1】SE投与後7日目各群10羽~14羽を剖検して臓器からSEの検出を行った。
5.【試験2】さらに繰り返し試験として、SE投与後9日目に剖検し、
  同様に臓器からSEの検出を行った。 
試験結果
 
 試験1および試験2ともに、ワクチン接種群において各臓器からのSE検出率は明らかに低いという結果がでました。



試験結果から分かったこと
 これらの試験は実験室内での小規模なものですが、クロアカのSE検出率やその菌数、産出されたタマゴの殻や内容、さらには体内臓器からのSEの有無をみると、ワクチン投与群の方が低い傾向にありました。同様の成績は他の研究者からも報告されています 。
  SEワクチン接種を受けた鶏ではSEに対するいくつかの抗体が産生され、この抗体が鶏のSE感染を防ぐことが期待されます。中でもSEのヒゲ(鞭毛)に対する抗体が高いほど、クロアカでの菌数が低いという結果がでました。また、ヒゲ(鞭毛)抗体はワクチン接種後の免疫の程度をモニターするのに都合が良いと期待されます。
  この試験から、産卵鶏に給餌制限ストレスをかけると、消化管やタマゴのSE感染や汚染リスクが高まることが分かりました。また、適切なワクチンの接種はSE感染や汚染リスクを軽減することも支持できました。ただし、ワクチンを接種した後に、抗体価をチェックすることが推奨されます。現在、卵黄を使っての抗体の検査をすることが可能です。
 


 
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鶏卵生産現場におけるSE汚染の仕組み 鶏卵生産におけるSE汚染防止対策:ワクチンのすすめ
おわりに 採卵鶏生産・衛生管理技術向上対策専門委員名簿

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