中国産鶏糞からのインフルエンザウイルス及びサルモネラ等の分離の試み

中国産鶏糞からのインフルエンザウイルス及びサルモネラ等の分離の試み


実験目的
 最近中国から沖縄県に輸入された発酵鶏糞のウイルスあるいはサルモネラ等の腸内細菌汚染が心配されたため、沖縄県養鶏協会から、これら微生物汚染の検査の依頼を受けた。そこで、ウイルスとしてインフルエンザウイルス、ニューカッスル病ウイルルス、細菌としてサルモネラを中心とする腸内細菌の分離を試みた。

実験材料
 中国から輸入された発酵鶏糞(30kg入)3袋

実験方法
  1. ウイルス分離
 各々の鶏袋の表面部分、中間部分、深部より、それぞれ250gを9か所より無菌的に採取した。そのうちの10gにペニシリン、ストレプトマイシンそれぞれ10,000u/ml及び10,000mcg/ml加えたPBSをそれぞれの検査材料に10倍量加え、十分に攪拌した。37℃30分間感作した後、3,000rpm30分間遠心沈殿を行い、その上清をウイルス分離材料とした。各材料につき10個のSPF10日齢発育鶏卵の尿腔に、0.2ml宛接種した。接種した発育鶏卵を37℃の立体ふ卵器でふ卵を4日間続行した。材料接種後24時間以内に発育を停止した発育鶏卵については、事故と見なして除外した。4日間毎日接種発育鶏卵を検卵した。その後発育鶏卵を立体ふ卵器から取り出して、一夜、冷蔵庫に置いた。翌日、接種鶏卵より尿液を採取した。試験管に0.5mlの採取尿液と等量の0.5%鶏赤血球浮遊液を混合して、室温に置き、鶏赤血球が凝集するか否かを観察した。凝集の認められなかった尿液は、各々の材料毎にプールして1サンプルとして、-80℃のフリーザーにストックした。なお、鶏胎児の形状の変化の出現についても、対照の無接種鶏胎児のそれと比較しながら検討した。
 このストックしたウイルス分離材料に等量の上記ペニシリン、ストレプトマイシンを加え、37℃30分間感作した後、3,000rpm30分間遠心沈殿して、再び、10個のSPF10日齢発育鶏卵に各材料毎接種したが、赤血球凝集が認められなかった。ウイルス分離材料については、更に2回同様の操作を行い、合計4代継代することにより、インフルエンザウイルス及びニューカッスル病ウイルスを中心として、ウイルスの混入の有無について検査した。
  2. 腸内細菌分離
 ウイルス分離の為に採取した250gの発酵鶏糞の150gを別の滅菌ビーカーに入れ、そこへ等量の滅菌生理的食塩水を加えて十分に攪拌した。その150mlの懸濁液と、2倍濃度のEEMブイヨン150mlを混合して恒温器に入れ、37℃48時間培養した。この培養液の一部をSBGブイヨンに添加して、更に24時間培養を続行した。培養後、一白金耳(はっきんじ)をDHL寒天平板培地に塗布した。一晩培養後、形成された細菌の集落を観察して、サルモネラあるいは他の腸内細菌の疑われた場合、生化学的性状を検査した。

実験結果
  1. ウイルス分離
 鶏赤血球凝集性のある因子はまったく分離されなかった。また、ウイルス分離材料の接種を受けた鶏胎児にも何ら変化は認められなかった。
  2. 細菌分離
 DHL寒天培地上でわずかな集落は形成されたが、サルモネラを始めとする腸内細菌の集落はまったく形成されなかった。

結  果
 今回、検査した中国輸入発酵鶏糞からは、インフルエンザウイルス、ニューカッスル病ウイルス等のウイルス、サルモネラを始めとする腸内細菌はまったく分離されなかった。
 しかしながら、中国より輸入される鶏糞はすべて安全であるということは難しい。今回検査した鶏糞についてのみ、安全であることが判明したにすぎない。各ロット毎にこのような検査を実施する必要があると思われる。

平成14年3月25日
鳥取大学農学部家畜微生物学教室
    教 授 大槻 公一


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