鶏インフルエンザに関する鳥取大学大槻公一教授の講演を聴講して(平成13年9月4日)



鶏インフルエンザに関する鳥取大学大槻公一教授の講演を聴講して(要点のみ)


海外悪性伝染病問題分科会(第2回)
〔(社)日本養鶏協会及び鶏卵自主基金事業部の合同開催 〕
日時:平成13年9月4日(火)13:30~
場所:ホテル聚楽(東京都千代田区)


1.鶏インフルエンザ(家禽ペスト)は強毒のニューカッスル病の病勢とは類似と考えるべき。(これに該当するウィルス型はH5、H7)

2.1999年3月の北イタリアの発生事例では当初弱毒型であったため国は強権発動による対策はとらず。同年12月17日突然変異により典型的な強毒タイプに変化。2000年4月までに約14百万羽が感染し淘汰の対象(1983年米国ペンシルバニアの17百万羽の発生羽数に近い)。以後イタリアはウイルスが検出されなくても検体陽性により全群淘汰の方針を採用。しかし、この後も中等毒ウイルスは検出の実態。(米国ペンシルバニアの事例でも同様)

3.1994 ~ 95年 のメキシコの事例(H5型)でも当初の弱毒型から拡大して強毒化。

4.ワクチン使用による防疫とは当該疾病の存在を公に認めたことと同義語。

5.米国でも生鳥市場は危険であり、1998 ~ 99年のUSDA調査ではニューヨーク及びニュージャージーのマーケット内の小売店の40 ~ 62% の鳥が感染し、運搬用トラックでは17 ~ 20% が陽性、大規模マーケットでの陽性例はなかった。

6.ニューカッスル病の血清タイプは1つのため、どのタイプのワクチンでも有効。インフルエンザウイルスは15種類のタイプがあるため、対策にはこの確認が必要。 日本でも鶏インフルエンザウイルス抗体を検出したが、検出率は低かった(6検体/8000検体)。ただし強毒タイプとなるH5、H9はなかった。

7.人間のインフルエンザは冬期のみに発生するが、夏期におけるこのウイルスの所在は不明。これには鶏等が係る可能性もあり。

8.米国ではウイルス検出のため鶏群内に検査専用鶏(おとり鶏)を混飼して調査。

9.引続き香港の生鳥市場では強毒のインフルエンザを発見。

10.鶏インフルエンザウイルスの体内増殖部位は、鶏では呼吸器、腸管であり、水鳥では主として腸管となる。(このため渡り鳥からのウイルス分離は糞便を使用)

11.当該疾病の感染により卵黄に抗体が移行する。この抗体検出は有効な確認方法。

12.鶏インフルエンザワクチンの開発・備蓄は有効な対応策。

13.渡り鳥は本病にとっては危険な存在となるが最初は弱毒の状態。

14.ニューカッスル病、鶏インフルエンザのウイルスは共に本来的には水鳥のウイルスのため水鳥の体内では強毒化しない。(異種動物の)鶏体内に入り強毒型に変化。

15.弱毒タイプが強毒化するのは飼養環境が悪いことの実証。弱毒タイプのウイルスの伝播力は弱い。しかし、他の呼吸器病が共存すると発生の危険性は増大。

16.予め鶏インフルエンザの発生時対策を検討しておくことは重要。


(1) 当該講演内容は大槻教授の講演を聴講して、(社)日本養鶏協会事務局の理解のもとに独自に作成したものである。
(2) このため、講演者本人の趣旨、意図と齟齬(そご)をきたす可能性があることは予めご了解願いたい。

文責 : 社団法人 日本養鶏協会事務局



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