2007年に発生した高病原性鳥インフルエンザの感染経路にかかる中間とりまとめ(概要)

別紙2

2007年に発生した高病原性鳥インフルエンザの感染経路にかかる中間とりまとめ

 

平成19年4月18日
高病原性インフルエンザ感染経路究明チーム


1. 発生概要

・平成18年11月に韓国で発生が確認された後、翌年1月13日から2月1日にかけて養鶏業が盛んな宮崎県及び岡山県において4例続けて発生した。
1例目:宮崎県清武町における肉用種鶏飼養農場(約1万2千羽飼養、3鶏舎)
2例目:宮崎県日向市における肉用鶏飼養農場(約5万3千羽飼養、5鶏舎)
3例目:岡山県高梁市における採卵鶏飼養農場(約1万2千羽飼養、10鶏舎)
4例目:宮崎県新富町における採卵鶏飼養農場(約9万3千羽飼養、1鶏舎)

・発生後、発生農場では殺処分、焼却・埋却、消毒などの防疫措置を実施した。

・発生農場を中心に半径10kmの範囲で移動制限区域を設け、養鶏場及び愛玩鳥の検査を実施したところすべて陰性であり、続発もなかったことから3月1日にすべての移動制限を解除した。

2. 現地調査の概要(調査項目は別紙)

・飼養形態、鶏舎構造、農場の立地環境などは4例4様である。

・各農場とも平成16年当時に比べ一般的な飼養衛生管理は概ね措置されていた。

・農場の外周に措置すべき農場フェンスについては、各農場とも未整備又は設置されていても破損等が確認されており野生動物や不審者が農場内に侵入可能な状況であった。

・防鳥ネットや金網については、鶏舎外壁や換気用天窓では設置されているものの、全ての農場で隙間又破損等が確認。また、鶏舎内でネズミの糞や野鳥の死体も確認されたため、これらが鶏舎内に侵入していたことが類推される。

・鶏舎内を移動することがないよう飼養されていた2~4例目の農場の死亡鶏は、作業管理者の動線や水・飼料・集卵のラインと関係なく、鶏舎内の一部の場所に集中して確認された。

・いずれの発生農場においても、野生生物の存在が確認されている。

・農場・鶏舎出入り口の消毒施設、鶏舎専用長靴・作業着、鶏舎作業管理者の専任化、給与水の消毒、衛生害虫駆除などは、一部不備な点も確認されている。

・人・物品・車両等の動きから海外の発生地域との接点は確認されていない。

・4例の農場間でウイルスを伝播させるような人・物品・車両等の情報は確認されていない。

3.ウイルス性状

(1)遺伝子性状

・全ての遺伝子分節が鳥由来である。

・分離された4つのウイルスはいずれも近縁であり、中国の青海湖、モンゴル、韓国、ロシアで過去に分離されたウイルスと同じ系統である。また熊本県のクマタカから分離されたウイルスも分離された4つのウイルスと近縁である。

・インドネシア、タイ、ベトナムで分離されたウイルスと異なる。

・2004年にわが国で分離されたウイルスと異なる。

(2)感受性

・鶏に対する静脈内接種及び経鼻接種では、一部の鶏にチアノーゼなどがみられ全 て死亡した。

・アイガモに対する経鼻接種試験では、ごく少数の死亡例は認められたが、アイガモに対する致死性は低かった。

・マウスに対する経鼻接種では、マウスに対する致死性は高かった。

(3)ウイルスの伝播力

・ウイルス接種鶏と同居した鶏は全て死亡した。

・ウイルス接種アイガモと同居した鶏は全て死亡した。

・ウイルス接種アイガモと同居したアイガモは全て生存した。

4.野鳥のウイルス保有調査(環境省)

(1)発生確認後に行った発生農場周辺の野鳥のウイルス分離検査
・1例目:252羽すべて陰性であった。
・2例目:202羽すべて陰性であった。
・3例目:209羽すべて陰性であった。
・4例目:213羽すべて陰性であった。

(2)野鳥全国調査

・野鳥の大量死は確認されていない。

・平成18年4月から平成19年3月までにおこなった全国の野鳥のウイルス保有調査は6,340羽すべて陰性であった。

(3)熊本県のクマタカ

 宮崎県で1例目の発生が確認された平成18年1月11日より前の1月4日に熊本県で衰弱死した野生のクマタカから鳥インフルエンザH5N1亜型ウイルスを分離。3月に行ったクマタカ発見地から概ね半径10kmの範囲で採取した野鳥220羽及び半径5kmの範囲で採取したネズミ17匹からのウイルス検出試験はすべて陰性であった。

5.ウイルスの感染経路

今後の発生予防対策を図る上で次の感染経路を想定しておくことが必要。

(1)国内への侵入経路
①分離ウイルスはいずれも近縁で中国、韓国、モンゴルとも同じ系統、
②ウイルスの確認は短期間で広範な地域(宮崎、岡山、熊本)、
③発生地域からの家きん及び家きん肉等の輸入は停止、
④発生農場と海外の発生地域との疫学的な関連が確認されていない、
⑤小型生物(鳥類、ほ乳類など)を捕食するクマタカからウイルス分離、
⑥ウイルスの侵入時期は不明、
⑦韓国のカモでも同じ系統のウイルスが分離、
などから、感染経路の特定は出来ないが海外で野鳥からウイルスが分離されていること等を踏まえると野鳥によるウイルスの持ち込みが想定される。

(2)鶏舎への侵入経路
①2~4例目では人の作業動線などと関係なく鶏舎内の一部で限局的に発生、
②防鳥ネットや金網に隙間や破損が確認、
③発生農場の鶏舎内外で野生生物が存在、
④鶏舎内でネズミの糞や野鳥の死体が確認、
⑤人・物品・車両等の4例の農場間の疫学的な関連がない、
⑥発生農場の飼養形態、鶏舎構造、農場の立地環境などは様々、
などから、野生生物(ネズミ、野鳥など)によるウイルスの持ち込みが想定される。

6.今後の対応

  海外から国内へのウイルスの侵入経路については野鳥の飛来ルートや生息状況などに関する情報、鶏舎へのウイルスの侵入経路については哺乳動物(マウスなど)に対するウイルス感受性、韓国等の海外の情報など情報を収集する。また人・物品・車両等に関する疫学情報ともあわせて総合的に精査する。

6.今後の高病原性鳥インフルエンザ対策への提言
 現時点で想定される感染経路から今後とるべき対策は次のとおり。

(1)野生生物に関する調査研究

 養鶏場とそれをとりまく環境に生息する様々な野生生物について、ウイルスに対する感受性を検査するとともに、それらの生息域や行動に関する情報の収集や調査研究を行うことが必要である。

(2)アジア地域の連携

 今後の国内における発生予測を図るため、本病の発生が確認されているアジア各国と連携して、本病の発生や流行に関する情報、日本・アジア地域や日本国内の野鳥の飛来ルートなどの調査研究の推進が必要である。

(3)農場における発生予防対策については、今後、次の事項について防疫指針の見直しを行うなど具体的できめ細やかな指導・点検を行うことにより万全を期すことが重要である。

・農場周囲のフェンスや鶏舎の防鳥ネットの張り方など鶏舎施設の保守・点検。
・作業や飼料・器材の運搬による人・物品・車両の動線や野生生物による伝播の可能性を踏まえた消毒の措置。
・衛生的な飼料や給与水を確保するための飼養衛生管理の徹底。
・鶏舎内外における衛生害虫(ネズミなど)の駆除。



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