平成19年3月17日 日本経済新聞夕刊記事より転記

 日本動脈硬化学会は脳梗塞(こうそく)や狭心症など動脈硬化性疾患の予防や治療に使う診療指針を4月に改定する。従来に使っていた総コレステロールにかわり「悪玉」と呼ばれるLDLコレステロールを原則として判断基準にする。安易な投薬治療を抑制するのが狙い。影響を受ける患者や動脈硬化の予備軍とされる人は2千万人程度いるとみられる。

  コレステロール「悪玉」を基準に
  動脈硬化の診療指針
動脈硬化性疾患の診断指針はこう変わる
(単位は血液1デシリットル中のミリグラム値)

 

総コレステロール

220以上

なし

悪玉コレステロール

140以上
(参考値)

140以上

投薬治療開始時期

指針には明記されていないが、即時に開始する場合が多い

患者によっては3-6ヵ月は食事指導で対応

  「善玉」除外、学会が改定
  不要な投薬防ぐ
 2002年に策定した現行指針は血液1デシリットル当たりの総コレステロール220ミリグラム以上を動脈硬化によって様々な病気を引き起こしやすい「高コレステロール血症」としている。これを悪玉コレステロールが同140ミリグラム以上と変更する。
 総コレステロールを基準にすると、日本人に多い、動脈硬化を防ぐ善玉の「HDLコレステロール」値の高い人も治療対象になり、不要な投薬治療につながる恐れがあると指摘されている。
 診断指針を投薬治療の開始基準と認識している医師もいることから、解説の中で、食事内容や禁煙の指導を治療の中心にすることを明記。高血圧や喫煙といった危険因子が二つまでの低リスク患者は、3-6ヵ月間指導しても改善しない場合に投薬を検討するとした。
 コレステロールは血液に含まれる脂肪の一種。善玉のHDLは余ったコレステロールを回収するが、悪玉のLDLが多いと血管の壁に付着して動脈硬化の原因になる。

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