高病原性鳥インフルエンザ感染経路究明チーム報告書の概要

(別添)

高病原性鳥インフルエンザ感染経路究明チーム報告書の概要

 

高病原性鳥インフルエンザ感染経路究明チーム


1 発生の特徴
(1)発生農場の特徴
   発生41農場はすべて採卵鶏農場。肉用鶏農場では発生がなかった。
 鶏舎構造は、ウインドゥレス鶏舎、開放鶏舎等様々。飼養衛生管理については、厳重に管理されている農場から対策の不十分な農場まで様々。
 
(2)発生地域の特徴
    水海道・坂東地区(常総市(水海道地区)、坂東市)の半径5㎞以内の地域と、小川地区(小美玉市(小川地区))を中心とする半径10㎞以内の地域の2か所で多発。これらの地域は国内有数の採卵鶏飼養地域。
 
(3)発生の時期
    原因がH亜型の弱毒タイプであり、感染鶏が特徴的な臨床症状を示さないことから、初発農場の特定が困難。少なくとも2005年5月中旬かそれ以前に初発農場へのウイルスの侵入があったと考えられるが、どの地区での発生が早かったか推定することは困難。
 
2 分離されたウイルスの特徴
(1)分離ウイルス株
   分離されたH亜型株の遺伝子は、グアテマラやメキシコで分離された株と相同性が高い。
 
(2)ウイルスの病原性と伝播力
    野外事例では、鶏に明瞭な臨床症状を示さず、鶏に対する病原性は極めて低い。侵入時期が明確な農場の鶏群間での抗体検査等から伝播力は強いと推察。
 なお、感染実験の結果では、鶏に感染しやすく伝播力が強く、アイガモには感染しないことから、本ウイルスは鶏に適応しており、鶏舎内及び鶏舎間伝播は容易に起こると考えられる。
 
3 海外から国内への侵入経路
(1)野鳥(渡り鳥)を介した侵入の可能性
  以下の理由から、この仮説の可能性は低い。
中米から日本に直接飛来する野鳥は知られておらず、またアラスカを介した伝播の可能性も極めて低い
分離ウイルス株は鶏に適応しており、野鳥間で感染が繰り返されているとは考えられない
茨城県が実施した発生農場周辺での野鳥の調査では、感染が確認されていない
 
(2)輸入鳥類及び輸入家きん肉を介した侵入の可能性
  以下の理由から、この仮説の可能性は低い。
本病発生国由来の生きた家きん類の輸入は停止されている
2004年2月以降、発生国由来の家きん以外の生きた鳥についても輸入が停止されている
発生国産の生鮮鶏肉等の輸入が停止されている
 
(3)人等を介した侵入の可能性
 

 農場関係者の渡航状況等の調査の結果、農場関係者が発生国等へ旅行した際に我が国にウイルスを持ち込んだ可能性を裏付ける事実は確認されていない。
 分離ウイルス株の遺伝子が中米で分離された株と相同性が高い(相同性94~97%)ことから、中米等の関係国政府と連携し、分離ウイルスの遺伝子情報や未承認ワクチンに関する情報収集等に努めたが、分離ウイルスの由来は明らかにすることはできなかった。
 しかしながら、以下の理由から、中米由来ウイルス株から作出された未承認ワクチン又はウイルスそのものが持ち込まれて不法に使用された可能性は否定できない。

分離ウイルス株の遺伝子が中米で分離された株と相同性が高い
日本の近隣諸国において、分離ウイルス株との近縁株による発生がみられていない
発生が茨城県南部に限局しており、分離ウイルスの遺伝性状がほぼ同一
渡り鳥による侵入の可能性が低い
分離ウイルスは自然宿主である水きん類よりも鶏に適応している
 
4 農場間の伝播について
(1)発生の形態
   発生は、限られた地域内の多数の農場に及んでいるが、単一農場での発生が拡散したのか、複数農場で同時に発生し、他の農場に波及したのかは不明。
 
(2)発生農場及び疫学関連農場の調査結果
 
鶏の移動による農場間伝播の可能性
 鶏が農場間を移動することによって伝播した可能性が高い事例、可能性の一つと考えられる事例が認められた。また、成鶏(中古鶏)の移動が小川地区から水海道地区への伝播に関与した可能性が考えられる事例が認められた。
鶏の移動以外での農場間伝播の可能性
  水海道地区における伝播は狭い地域に養鶏場が密集していることから、鶏の移動以外の方法で伝播したと推定。坂東地区へは、鶏の移動はないことから、人、車両などにより伝播したと推定。
  小川地区においては、発生農場の鶏舎構造、飼養衛生環境はさまざまで、同じ地域内の同じ飼養衛生環境でも感染していない農場も存在。関係車両、人・物の動きについて疫学調査を実施したが、発生農場間を明確に結びつける伝播経路は明らかになっていない。
 
(3)ケースコントロールスタディ(症例対照研究)
 

 発生農場群と非発生農場群の発生に係る要因を比較分析するケースコントロールスタディの結果からも、水海道地区では、近接農場における近隣伝播が、小川地区を中心とした地区では、グループ農場内での鶏の移動、人・物の出入りなどが農場間伝播の主要な原因と考えられた。

 
5 まとめ
(1)発生の特徴
   今回、茨城県で発生した弱毒タイプの高病原性鳥インフルエンザ(H亜型)は、2004年の強毒タイプの発生(H亜型)と異なり、以下のような特徴。
原因ウイルスが中米で分離された株に極めて近縁
日本の近隣諸国において、今回の発生株に近縁な株による発生がない
発生が茨城県南部に限局
今回分離されたウイルスは抗原性がほぼ一致
原因ウイルスは、自然宿主である水きん類よりも鶏に適応し、感染性は強いが臨床症状を示さない。
 
(2)感染源・感染経路
 
ウイルスの由来・侵入経路については特定することはできなかったが、ウイルスの性状、発生地域が限局していること等から、原因として中米由来ウイルス株から作出された未承認ワクチン又はウイルスそのものが持ち込まれて不法に使用された可能性は否定できない。
少なくとも2005年5月中旬かそれ以前に初発農場へウイルスが侵入。どの地区での発生が早かったか推定することは困難。
疫学調査の結果、一部の農場は、農場間で鶏を移動することにより伝播した可能性が高い。その他、近隣伝播、人・物の出入りなどが伝播の主要な原因と推察。
 


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