鳥インフルエンザ防疫対策緊急記者会見(メモ)
平成17年9月8日
鳥インフルエンザ防疫対策緊急記者会見(メモ)
(社) 日本養鶏協会
I.基本的見解
1.昨年1月にわが国で79年ぶりとなる鳥インフルエンザが発生し、これの根絶のための努力が行なわれてきたが、今年に入って再発し、既に汚染鶏が400万羽を超えていることは残念である。特に感染原因が明らかになっていない中で、農林水産省からのプレスによると不正ワクチンの使用が疑われていることは極めて残念である。
2.我々生産者団体は数年前より鳥インフルエンザのわが国への侵入の危険性を危惧し、自主的にサーベイランスを実施するとともに昨年日本鶏卵生産者協会を結成し、万一の時に備えて鳥インフルエンザ互助基金制度を立ち上げてきた。
3.鳥インフルエンザ発生先進国の事例も調査し、イタリア、アメリカ等にも調査団を派遣すると共に国内でも学習会を開催する等わが国における最善の対策について検討してきた。
4.世界における鳥インフルエンザの流行は2000年以降様相が一変し、発生に伴う殺処分羽数も世界で1億8千万羽を超え、特にアジア地域では1億羽以上に及び、現在もなお発生が繰返され日本は最も危険な地域に隣接している。
5.わが国における養鶏の立地状況は茨城県、千葉県に象徴されるように全国各地に養鶏密集地帯があり、最近では1農場100万羽前後の大型農場が数多くあるため、一度発生すると本病制圧が困難となる状況にある。
6.このようなアジア地域及びわが国養鶏の立地状況を踏まえてわが国の「鳥インフルエンザ防疫指針」は策定されなければならないが、去る3月30日の第3回家畜衛生部会で決定された「鳥インフルエンザに係る防疫指針」は以上の観点に基くものでないため、現状では機能するとはいえず、現在、わが国は鳥インフルエンザの汚染国の実態となった。
7.現在の流行株は昨年とは異なり弱毒株であり人への影響はないが、放置すれば半年から1年後には強毒株に変異する可能性があるため人への影響も懸念される。
従って野外の実態にあった適切な対策を1日も早く本病ウイルスを絶滅させることが重要である。
8.以上の観点に基く農林水産大臣、局長等への要望書は過去12回に亘り提出してきたが主要な点については殆んど聞き入れられなかった。
II.生産者団体が主張する鳥インフルエンザ対策
1.サーベイランスの精度と速度を早め、わが国、特に養鶏密集地域における野外ウイルスの実態を早急に把握すること。検査方法の見直しと体制を強化すること。
2.集団発生が認められている茨城県地域では早急に未感染鶏を中心に備蓄ワクチンによって予防的ワクチン接種を実施すること。
3.サーベイランスの結果、感染が認められた鶏群はウインドゥレス、開放型鶏舎を問わず全群殺処分とすること。未感染鶏で尚かつ危険な地域にあっては行政の管理下で予防的ワクチンの接種を実施すること。
4.殺処分手当金、及び生産者互助金は制度化されているものの、連続的に殺処分が繰返されることにより財源涸渇に近づいており、この充実強化を図ること。
5.現状の「鳥インフルエンザ防疫指針」を実態に合った機能する内容に変更すること。
III.鳥インフルエンザワクチンの安全性・有効性について
1.ワクチン接種鶏は、非接種鶏に比較して野外ウイルスの感受性が1/100に抑えられ、かつ感染しても排出されるウイルス量は1/1,000 ~ 1/10,000になり、この相乗効果で危険性は1/10万 ~ 1/100万に減少する。
2.発症のみならず感染も防御できる優秀なワクチンが既に海外で開発されており、(独)動物衛生研究所でも立証済みであり、これらワクチンの使用によるリスクは全くない。
3.野外感染による抗体とワクチンによる抗体を区別できるシステム(DIVA)は既に実用化されている。
IV.海外の鳥インフルエンザ対策
1.海外では鳥インフルエンザの大規模発生、大量殺処分の苦い経験を踏まえて、防疫対策は殺処分を中心とするものからワクチンを組み込んだコントロールの方向に転換しつつある。
今年8月28日にEU委員会で採択された新しい指令は、弱毒性鳥インフルエンザの強毒性への変異を防ぐためには、効果的なサーベイランス体制の確立、ワクチンによるコントロールと防疫措置、人間への健康上のリスク軽減、経済的負担の軽減、社会的な風評被害の最小化-の5点を挙げ、特に近年の鳥インフルエンザウイルスの特徴を踏まえ、ワクチン接種をした鶏と野外感染した鶏との識別が対策のポイントであるとしている。
2.アメリカ、イタリア等における鳥インフルエンザ防疫対策も当初は殺処分であったが、ワクチンを組み込んだ防疫対策により最終的には清浄化に成功している。
3.殺処分鶏への補償措置についても、海外では日本より充実した内容となっている
V.8月22日の農林水産省方針の変更に対する見解
1.ウインドゥレス鶏舎が開放鶏舎に比較してウイルスの拡散を防ぐことが出来ると云う科学的根拠はない。
2.感染鶏を殺処分せずに残すことは次の発生源を残すことになり極めて危険である。
3.鶏糞の移動制限区域外への搬出、廃鶏の処置方法、若めすの導入方法等はウイルス根絶の見地から納得でききない。