鳥インフルエンザ問題の根本的解決に向けての要望

農林水産大臣
  島村 宜伸 殿

要 望 書


平成16年12月2日

日本鶏卵生産者協会
会長 梅原宏保
社団法人日本養鶏協会
会長 梅原宏保



鳥インフルエンザ問題の根本的解決に向けての要望

 我が国養鶏産業の振興につきましては、平素より各段のご支援、ご指導を賜り厚く御礼申し上げます。
  さて、本年1月より我が国で79年ぶりに発生した高病原性鳥インフルエンザ対策につきましては政府、与党とも格別なるご尽力を賜り感謝申し上げます。
  また、さる11月17日開催の自民党鳥インフルエンザ対策本部におきまして、ワクチン備蓄量の積増し、生産者互助基金事業への公的支援の実施など当面の対策を打ち出して戴き、農林水産省も具体的作業に着手していることは、生産者に一定の安心感を与えるとともに、この問題の根本的解決に向かっての第一歩であると高く評価するものであります。
  しかしながら、ワクチンの予防的使用が認められず、消毒を中心とする衛生管理の強化しか対策の打てない現況では本病の再発が強く懸念され、万一、発症した場合には先の京都の事例およびイタリア・オランダ等海外事例に見られるように即、倒産に追い込まれる可能性が大である中で、流行期を迎えた現在、全国の養鶏家は日々、恐怖におののいているのが実態であります。
  また、一度、本病が養鶏密集地帯に発生した場合は隔離、殺処分のみでは感染拡大は阻止できず、我が国養鶏産業は壊滅的打撃を受けるとともに、消費者の食のパニックを引き起こすことを強く懸念するものであります。
  つきましては、鳥インフルエンザ問題の根本的解決のために、下記の事項につきましてご検討くださいますよう要望致します。





1.新開発ワクチンの常時予防的使用の可能性についての検討委員会の設置・開催

   現在、新しく開発されたワクチンについての性能試験が(独)動物衛生研究所等で実施され、感染も防禦できるとの高性能の結果を示している。この成果に基づくワクチンの予防的使用に関する鳥インフルエンザ対策の検討を行うため、生産者代表も含めた検討の場を設ける必要がある。
 

2.鳥インフルエンザ発生時のリスク分析とワクチン使用要件に関する検討委員会の設置

   我が国の養鶏産業が、狭い国土に多数の養鶏密集地を抱えている実情を踏まえて、実務経験を有する海外の疫学者も参加した本病発生時のリスク分析を行うとともに、ワクチン使用の手順について生産者も参加した産、官、学共同の検討委員会の設置を立ち上げる必要がある。
 

3.DIVAシステムの早急な構築

   海外の事例においても、ワクチン使用は国等公的機関の管理下でワクチン抗体と野外感染ウイルスを区別するためのDIVAシステムの下に実施することが必須条件となっている。このため我が国においても、主に養鶏密集地帯を中心に早急にDIVAシステムを構築する必要がある。
 

4.鳥インフルエンザワクチンの早急な輸入承認と備蓄の一層の強化

   既に海外では、感染も防御できるほどの高性能ワクチンが既に開発されており、このワクチンについては、つくばの(独)動物衛生研究所の試験でも性能が立証されている。従って、これらのワクチンについての早急な輸入承認と備蓄の一層の強化(少なくとも3千万ドーズ以上)をすることが必要である。
 

5.生産局に生産支援のための家畜衛生部門の設置

   従前の畜産部衛生課の組織が消費・安全局に移行したことにより、現在の衛生行政が消費者対応に軸足が移り、生産振興の立場が希薄になっている感が否めない。このため、生産局内に養鶏を含めた畜産全体の振興を支援するための家畜衛生部門を設置することが必要である。
 

6.現行の鳥インフルエンザ防疫関連全委員会の再検討と高病原性鳥インフルエンザ防疫指針の見直し

   さる11月18日に公表された「高病原性鳥インフルエンザに関する特定家畜伝染病防疫指針」の内容は、現状の生産現場の実態とは乖離し、実効を挙げる内容とは思われない。このような結果になった要因は、関連する委員会の委員の選任方法に問題があると考えられる。本病の再発防止は、産、官、学が共同協力してはじめて可能であり、その基本は検討委員会の委員は、各階層より民主的に選任される必要がある。
 




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