平成15年11月19日

いわれなき鶏卵のQ熱汚染キャンペーンに反論する

  • (代表)社団法人 日本養鶏協会
    会長代行  梅原 宏保
  • 社団法人 日本卵業協会
    会 長  寺西 孝年
  • 社団法人 日本種鶏孵卵協会
    会 長  赤木 紀元
  • 全国鶏卵販売農業協同組合連合会
    会 長  池田 隆政
  • 日本養鶏農業協同組合連合会
    会 長  加藤 和夫
  • 全国養鶏経営者会議
    会 長  宮澤 兄一
  • 日本鶏卵産業協会
    会 長  中村 光夫
  • 日本成鶏処理流通協議会
    会 長  宮本 一彦

 最近における人獣共通感染予防医学研究所(人獣研)等の、鶏卵およびその加工品などによるQ熱感染の危険性に関する執拗なキャンペーンは、一部マスコミ等でも取り上げられ消費者に大きな不安感を与え、鶏卵消費に悪影響を与えています。
 しかし、人獣研等の鶏卵等のQ熱感染に関する検査方法は、科学的手順を踏んだものではなく、その検査結果についても専門家の常識を越えた数字が出されており、専門家の間で強い疑義が出されています。
 一方、日本養鶏協会が今年5月、10月に公的検査機関である(財)畜産生物科学安全研究所に依頼して実施したQ熱感染に関する全国実態調査、及び北里研究所等による学会発表(10月)においても鶏卵のQ熱感染の事実は確認されず、また、厚生労働省によると過去10年間、国内外における鶏卵によるQ熱感染の報告は皆無です。
 以上により、鶏卵を原因とするQ熱感染の可能性は極めて低いと思われます。ついてはこのようないわれなき、鶏卵のQ熱汚染報道並びに人獣研等によるQ熱汚染キャンペーンに強く抗議するものです。

 わが国鶏卵産業は、物価の優等生と言われるくらい安価、かつ良質なタンパク源としての鶏卵を供給しつづけ、いまや鶏卵は国民の食生活になくてはならない食品として広く定着しています。
 また、最近における消費者等の食の安全・安心に対する急速な関心の高まりを受けて、賞味期限の表示を徹底するなど、従来にも増して安全・良質な鶏卵の生産・供給に務めているところです。
 こうしたなか、昨年12月以来一部週刊誌、テレビ、新聞等において、鶏卵がQ熱菌に高率に汚染し、人に感染する危険性が高いので“鶏卵は生で食べるのは止めたほうがよい”等を趣旨とする情報が、人獣共通感染予防医学研究所(人獣研)の関係者等により盛んに流されております。
 このことは、わが国の伝統的な食文化の一つである“卵の生食”に対し、消費者の恐怖をいたずらに煽り、鶏卵消費に大きな悪影響を及ぼしております。現在、鶏卵業界はかつてない低卵価に苦しんでいますが、今回のQ熱問題がその一因となっていることは間違いないところです。また、一部量販店などからは鶏卵の納入に際し、Q熱検査の証明書を要求されており、業界はただでさえ苦しい中で余分な検査費用の負担を強いられています。
 しかし、人獣研等の鶏卵によるQ熱感染の危険性に関するキャンペーンは、下記の理由により科学的根拠のないものであり、この時期になにゆえに鶏卵に的を絞り度重なるキャンペーンを行うのか理解に苦しむところであります。

1. 厚生労働省に問合せたところ過去10年間において国内外において生卵によるQ熱感染の報告は皆無です(資料1)。人獣研のいうように生卵等が高率(鶏卵で1~10% マヨネーズで26~60%)に汚染されているのが事実なら、常識的に見てもかなりの数の患者が出ているはずです。また、一番危険なはずの養鶏関係者でQ熱に掛かった人がいるという話も聞いたことがありません。
2. (社)日本養鶏協会が公的検査機関である(財)畜産生物科学安全研究所に依頼して実施したQ熱感染に関する全国実態調査においても、第1回目調査(03年5月)では33県44農場の409羽の鶏がすべて陰性、第2回目調査(03年10月)では33件44農場406羽の鶏のうち405羽が陰性、1羽が陽性であり、2回を通じての陽性率は0.12%と極めて低いものでした。また、この陽性鶏が産んだ鶏卵7個について検査したところすべて陰性でした(資料2)。
今回の1羽の鶏の陽性反応については、かつて感染した痕跡なのか、または菌を保有しているためか調査中です。一般的に感染症においては、母胎が陽性でも、子供に菌が感染することはまれです。これは鶏と卵についても言えることで、例え鶏がQ熱菌を保有していても卵に菌が移行することはめったにないといえます。
3. 本年10月の日本獣医学会における(社)北里研究所等による発表「鶏卵および卵製品におけるCoxiella burnetiiの疫学的調査」でのデータにおいても、検査した鶏(98羽)、食用生卵(1,610個)、卵製品(61検体)はすべて陰性でした(資料3)。

 以上の日本養鶏協会や北里研究所等の検査結果、およびここ10年間における鶏卵によるQ熱発生報告が皆無であるという事実からみて、鶏卵を原因とするQ熱感染の可能性は極めて低いと思われます。ついてはこのようないわれなき、鶏卵のQ熱汚染報道並びに人獣研等によるQ熱汚染キャンペーンに強く抗議するものです。
 業界としても今後、第3回目のQ熱検査を近日中に実施し鶏卵の安全性をさらに確認し消費者に訴えていく所存です。
 また、消費者に誤解と恐怖を与える根拠なきQ熱恐怖キャンペーンに対し、厚生労働省としても至急鶏卵のQ熱汚染問題について解明されることを要請します。



1. 過去10年間においては、国内外とも生卵によるQ熱の感染報告は皆無であること。(厚生労働省関係機関の見解、資料1)
2. (社)日本養鶏協会が実施したQ熱汚染実態調査結果(資料2)
3. 日本獣医学会(H15年10月)発表における報告(資料3)

このページの先頭へ

前のページ