鶏卵のQ熱汚染問題に係る 金沢大学 山口和男教授 との主な質疑応答(概要)
平成15年10月28日
鶏卵のQ熱汚染問題に係る
金沢大学 山口和男教授 との主な質疑応答(概要)
1.Q熱に関する検査証明書について | |||||
問 : | 4/8付け、10/1日付けの金沢大学名の証明書において、マヨネーズ及び鶏卵の検査におけるQ熱菌の生存確認試験において、6/6(100%)、2/6(33%)がQ熱菌が生存との証明をされているが、山口教授自らがQ熱菌の生存を確認したのか。 | ||||
答 : | 当方の施設には、Q熱菌の試験をできる施設がないため、生存確認試験は人獣共通感染予防医学研究所(人獣研)に依頼した。その結果による証明内容である。 | ||||
更問: | 自分自らが検査していない内容に、何故に証明書を発行するのか。一般常識からは、とても理解できないが。 | ||||
答 : | そのように批判されれば、当方もその事実は認めざるを得ない。 | ||||
2.鶏卵からのQ熱菌の検出について |
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問 : | PCR法により鶏卵がQ熱菌陽性であったとしているが、PCR法は例えばQ熱菌の一部分の遺伝子を単に増殖させているため、仮りにQ熱菌の一部、又は死んだQ熱菌が存在した場合でも陽性となるはずだが。 | ||||
答 : | 確かにそうであるが、自分はQ熱の生菌が感染性を有する(生きた菌の)状態で鶏卵内に存在していると考えている。 | ||||
3.Q熱菌と人、動物への感染性について |
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問 : | Q熱も他の感染症と同様に、動物種によるバリアー(障壁)が特になければ当然に人間、動物にもある程度の感染が起りうる(抗体陽性)と考えている。 しかし、Q熱については過去10年以上に亘って、国内外ともに鶏卵による人間への感染報告は皆無である。 また、各種感染症の常識では、どの感染症においても感染を引起すためには一定の感染量(例えばQ熱の菌数)が必要となるはずであるが。 |
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答 : | アメリカCDC(米国厚生省疾病管理・予防センター)の報告によれば、経口投与によりQ熱感染を引起すためには10万個以上のQ熱菌の経口投与が必要とされている。 | ||||
更問(1): | 仮りに陽性鶏の一部からQ熱菌が鶏卵内に移行することがあり得たとしても、我々は1~2個のQ熱菌又はその断片が移行する可能性の有無を議論している現況にある。現実的に10万個以上ものQ熱菌が鶏卵内に移行することはあり得ないのではないか。 | ||||
答 : | 確かに、一度にそのような多数のQ熱菌が鶏卵内に移行することはないと考えている。 | ||||
更問(2): | それならば、何故に、今般の動物実試験において感染が成立したのか。動物試験においてQ熱菌生存を確認したということは、感染量以上のQ熱菌数が鶏卵内に存在したことになるが。 | ||||
答 : | 確かにその通りである。しかし、今回の動物試験においては特殊なマウスであるスキッドマウス(T細胞※、B細胞※※が共に欠損)を用いたため、極めて少数のQ熱菌の存在した場合でも感染は成立する。 | ||||
注: |
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更問(3): | T細胞、B細胞が共に欠損する動物を用いたとすると、突然変異によって作出した実験動物では起り得ても、一般の人間社会ではあり得ない極めて特殊な動物(マウス)を用いて感染実験を行っている。これを人間への感染問題として考えた場合、現実的には日本人1億2千万人の中に、スッキドマウスのようにT細胞、B細胞が共に欠損している人間は一人たりとも存在しないと思うが。 また、このような極めて特殊な動物を用いて鶏卵による人間へのQ熱感染問題を議論することは論外ではないか。 |
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答 : | 確かに言われる通りであるが、動物実験としての感染は成立している。 | ||||
4.今般の鶏卵のQ熱汚染問題の展開について |
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問 : |
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答 : | 感染報告が皆無であるからといっても、学者の立場としては研究しないというわけにはいかない。 検査結果の違いは、検査方法の違いによるものと考えている。 |
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更問: | 一民間研究所である人獣研が、公的機関を含めて他の研究機関ではQ熱菌の検出は不可能であるとしている。通常の技術論では、このようなことはあり得ないのではないか。検査手法及び検査結果が正しいのであれば正式に学会、学術誌にも報告して公開すべきではないか。 少なくとも"食の安全"を主張するのであれば、公式な手順による発表を全く行わずに、このような異常な技術論争を展開している関係者に、いやしくも税金によって成立つ国立大学名で証明書を発行し関係業界を混乱させている現状を如何に考えているのか。 |
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答 : | 自分としては人獣研にも検査方法を公開するように要請している。皆さんが、当方に対して言いたい気持ちは理解できる。 |
注: | 以上の内容は質疑応答の概要を両団体の理解のもとに整理したものであり、文責は両団体にある。 |
-参考- |
両団体の解説 |
1. | "食の安全"に関する、国内外でも極めて特異な検査結果となる報告の証明書に、国立大学名で自分自らが確認していない内容(Q熱菌の生存確認)に証明書を発行している事実に極めて強い不信を感じたこと。 |
2. | "食の安全"の観点から鶏卵のQ熱汚染と人間への感染問題を議論するのに、スキッドマウスのように日本国内のみならず世界中の人間にも現実的には存在しえない動物モデル(T細胞、B細胞が共に遺伝的に欠損、免疫能力が遺伝的に皆無)で、感染試験の実施し、これにより人獣研が鶏卵の安全性問題に言及している不可解さを痛感したこと。 |