2007年に発生した高病原性鳥インフルエンザの感染経路について(概要)
(別添)
2007年に発生した高病原性鳥インフルエンザの感染経路について(概要)
高病原性鳥インフルエンザ感染経路究明チーム
1.発生の特徴
・1月13日から2月1日までの約2週間に4農場(宮崎県3農場、岡山県1農場)で本病の発生を確認。発生農場における飼養形態、鶏舎構造、立地環境などは様々である。
・発生農場と海外の発生地域や発生農場間に疫学的な関連は確認されなかった。
・4農場の分離株と近縁のウイルスが1月4日に熊本で捕獲されたクマタカより分離されており、1月初旬にはウイルスが存在していたと想定される。
2.分離ウイルスの特徴
・4農場及びクマタカから分離されたウイルスは、全て近縁な鳥インフルエンザH5N1亜型ウイルスであり、過去に中国、モンゴル、韓国で分離されたウイルスと相同性が高く、2004年の国内分離ウイルスや、現在、東南アジアで流行しているウイルスとは異なる。
・実験室内の病原性試験において、鶏やマウスでは病原性が高く、アイガモやラットに対しては病原性が低いことが確認された。
・実験室内の伝播性試験において、鶏から鶏、アイガモから鶏・アイガモへウイルスの伝播が確認された。
3.国内へのウイルス侵入経路
次のことから、渡り鳥からウイルスが分離されるなどの直接的な証拠はないものの、海外の事例などから渡り鳥による国内へのウイルスの持ち込みが想定される。国内において、弱毒性のウイルスが強毒性へ変異した可能性、海外から家きんや人を介した侵入の可能性は低いと考えられる。
・今回分離されたウイルスは、①中国、モンゴル、韓国で分離されたウイルス、②昨年末、韓国の野生の水禽類から分離されたウイルス、③本年1月、熊本県で野鳥のクマタカから分離されたウイルス、と相同性が高いこと
・近年、国内では弱毒タイプのA型鳥インフルエンザH5N1亜型ウイルスが分離された事例はないこと
・発生国からの検疫措置や農場関係者と発生国との関連性がないこと等から海外からの人による持ち込みの可能性は極めて低い。
4.農場内へのウイルス侵入
次のことから、鶏、人、飼料、資材などの移動による人為的な原因ではなく、野鳥や野生生物による持ち込みが想定される。
・1・2例目の農場では、発生前に雛の導入や出荷はなく、3・4例目の農場では、発生した区画と離れた場所に導入されていたこと
・2~4例目の農場では、初発場所が出入り口から離れた場所であり、人の作業導線との関わりがないこと
・ 農場関係者、来訪者、飼料、医薬品関係者などについて発生農場間に共通した疫学的な関連性は確認されていないこと
・ いずれの発生農場においても、鶏舎施設の野鳥や野生生物の侵入防止対策は必ずしも 十分ではなく、鶏舎内でネズミの糞や野鳥の死体が認められていること
5.まとめ
渡り鳥からウイルスが分離されるなどの直接的な証拠はないものの、海外の事例などから渡り鳥による国内へのウイルスの持ち込み、野鳥や野生生物による農場内へ持ち込みが想定される。今後は、より適切な感染経路の検討を行うためには、野鳥の継続的なモニタリングや防疫措置開始前の現地調査が必要である。
今回の発生は、早期発見・早期通報により迅速かつ適切な防疫対応が図られたが、今後の養鶏場の発生予防対策をより確実に行うためには、通常の飼養衛生管理の周知・徹底に加え、清掃・消毒の徹底や野生生物等の侵入防止対策の強化とともに、農場における飼養衛生管理の実施状況の再チェックを行うなど、鶏舎内外のバイオセキュリティ対策の徹底を図ることで、都道府県及び生産者等の関係者が一体となって発生予防対策等を確実に行うことが重要である。