「週刊新潮」への抗議文の提出について

平成18年3月7日


週刊新潮編集部
 編集長 早川 清 殿

週刊新潮特集
「茨城だけ発生『鳥インフルエンザ』はばらまかれた『陰謀ウイルス』が原因だった!」への抗議と謝罪・訂正の要求



社団法人 日本養鶏協会
会長 梅原 宏保
 
日本鶏卵生産者協会
会長 梅原 宏保
 



 さる2月9日発行の貴誌における標記特集は、今回の茨城県下の鳥インフルエンザの発生原因を「バイオテロ」とした根拠薄弱な特定の主張を一方的に取り上げ、杜撰または意図的にゆがめた方向付けにより、業界関係者により引き起こされた「陰謀ウイルス」説を強く印象付ける記事に仕立てている。
 貴誌のように大きな社会的影響と責任を持つ週刊誌が、この時期に合理的、客観的根拠もない中で突然このような記事を掲載したことには理解に苦しむものがあり、その背景には、今回の鳥インフルエンザ発生は「バイオテロ」によるものであり「自分は被害者である」との印象を世間に与えたい特定企業の意図があるのではないかと疑いたくなる。
 特に出所も定かでない農水省関係者の言葉として、「感染源の可能性は二つある。ワクチンを認可させたい人たちが、養鶏業者に"危険だ"と煽ってワクチンを裏で買わせ、鶏に打たせて被害を広げた。あるいは"ライバル業者を潰したいがために、誰かがウイルスをバラまいたか。いずれにせよ、被害が広がればワクチン必要論が高まるかもしれない」を引用し、今回の鳥インフルエンザ発生は人為的な「陰謀ウイルス」が原因としか考えられないと結論づけていることは許しがたいことである。
 貴誌は取材源の秘匿を理由に農水省関係者名を明らかにしないが、本協会が農水省消費安全局に文書照会したところでは、当局の関係者でそのような発言をした者はいないとの局長名の文書回答があった。氏名も明らかにせず、納得できるような具体的事実も示さず陰謀ウイルス説を安易に流すことは誠に無責任である。
 この記事は国際基準に沿って一定期間、一定地域で国との合意の得られたルールに基づくワクチン使用を求めている全国の真面目な生産者の努力を中傷するとともに、根拠なきバイオテロ説を流布させることにより、養鶏業界の信用を著しく失墜させるものであるため(社)日本養鶏協会、日本鶏卵生産者協会の連名で強く抗議するものであり、具体的なバイオテロ(陰謀ウイルス)説の根拠の開示を求めるとともに、この開示が困難である場合は記事の訂正と謝罪を強く求めるものである。


【 参考 】
 記事ではバイオテロ説の根拠としてまず、イセファームの現場責任者の西山取締役の言を引用している。それによると昨年10月28日にイセファーム与沢農場のケージに外部から持ち込まれたと思われる不審な鶏を2羽発見したが4日後に焼却してしまったとしている。
 しかし、イセ食品のホームページでは既に10月17日から今回の茨城における鳥インフルエンザ発生の原因としてバイオテロの可能性を強く主張しており、不審な鶏が発見されたとする10月28日にはイセファーム関連農場は当然に厳戒態勢にあったはずである。不審な鶏が見つかればバイオテロ説を立証する有力な重要証拠であり、当然に保存し所轄の家畜保健所などに通報し検査を依頼するはずであり、それを焼却するとは全く信じられない話である。
 バイオテロ説については国の高病原性鳥インフルエンザ感染経路究明チームの昨年10月31日の中間とりまとめにおいても触れているが、その50頁で「バイオテロに関しては、目的が不明確であり、検出されたウイルスが弱毒タイプであること、広域で発生しているにもかかわらず不審な動きの情報もないことなどからその可能性は低いと現時点では考えられる」としている。
 また、記事ではイセファームの与沢農場、小川農場のみに限ってバイオテロの可能性と絡ませて記述しているが、既に同年8月にイセグループの茨城の3農場、埼玉の1農場で鳥インフルエンザが発生していることに一言も触れていないのも不思議である。茨城の3農場はいずれも与沢農場、小川農場所在地の小川町周辺にあるため、当然農場間の各種交流などによる動線交差によるグループ間感染の可能性もひとつとして考えられる。
 事実、埼玉の農場の感染は同じイセグループの茨城における鳥インフルエンザ発生農場からの鶏の移動が原因であることは明らか、と感染経路究明チームの中間取りまとめで指摘している。また、陽性鶏群が農場監視プログラムに下にあるイセグループの茨城の1農場は鶏糞処理施設がないことから、その鶏糞は与沢農場の近距離にある鶏糞処理施設に搬出されており、それが与沢農場の感染源になった可能性も考えられる。
 貴誌も言及している未承認ワクチン使用の可能性については感染究明チームも指摘しているが、国はこの可能性に言及したことから、一刻も早く感染経路を明らかにし、未承認ワクチンの使用に関する世の疑惑に終止符を打つことを期待しているところである。
 (社)日本養鶏協会、日本鶏卵生産者協会としても別途「鳥インフルエンザ発生問題に関する調査委員会」を設置し、自ら感染原因の究明に努めているところである。その一環として日本鶏卵生産者協会会員を対象に未承認ワクチン使用の有無についてのアンケート調査を実施したが、全員から使用していない旨の回答があった。いかなる理由があれ未承認ワクチンの使用は認められないものであり、いやしくも我々生産者団体及び関係者がその使用を煽る行為は絶対にありえないものである。


このページの先頭へ

前のページ