「サルモネラ対策とトリインフルエンザ問題」の概要
-J・R・Cテクニカルシンポジウム21を聴講して- |
- シンポジウムの概要
- 日時 平成13年10月24日 10:30~
- 場所 東京都、八重洲富士屋ホテル
- 講師
Dr.ピータホルト(米国農務省、南東部家禽疾病研究所)
Dr.中村政幸(北里大学獣医畜産学部教授)
Dr.大槻公一(鳥取大学農学部教授)
- 講演内容の概要
- 鶏インフルエンザ関係
- インフルエンザウイルスは本来的には水鳥が保有しているウイルスである。
- インフルエンザウイルスにはH1~15のタイプがあるが、家禽ペストと呼ばれるものはH5、H7によるものである。
- ウイルス感染は、強毒タイプでは全身感染(死)であり、弱毒タイプでは腸管、上部気道感染である。
- 特に結腸、肛門部(総排泄腔)でも増殖するため、ウイルス分離材料として新鮮な糞便が利用される。
- 鶏インフルエンザ発生においてはアメリカ、アジアで見られる生鳥市場(Live bird market)の存在が問題。
- インフルエンザウイルスは、渡り鳥によっても全世界的に拡散される。
- 1983年の米国ペンシルバニア州での大発生時においては、タイプは異なるが日本でも白鳥からウイルスが分離された。
- インフルエンザウイルス感染は単独によるものではなく、IBV(鶏伝染性気管支炎ウイルス)のような他のウイルスの感染も絡む。
- インフルエンザの症状はウイルス株によっても異なり、必ずしも呼吸器症状を示すとは限らず腎炎を起こすタイプもある。
- ウイルス感染調査のため、おとり鶏として鶏群内にSPF(特異病原体フリー)の鶏を配置して、定期的に検査する方法がある。
- サルモネラ(SE)問題〔(強制)換羽との関係から〕
- (我が国でも広範に実施されている)(強制)換羽は、全米2億4千万羽の鶏の内、60~70%に相当する1.44~1.68億羽で実施されている。
- (強制)換羽と免疫との関係
(強制)換羽の実施は免疫機能に影響を及ぼす。(液性免疫※には影響を及ぼさないが、細胞性免疫※※には強い抑制が起る)
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注:※ |
液性免疫とはIgM、IgGなどの血中抗体産生に係る免疫(B細胞が関与) |
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※※ |
細胞性免疫とは臓器移植、ガン免疫などに関係する免疫(T細胞が関与) |
- 強制換羽の実施とサルモネラ(SE)との関係
- SEの感染確率が増加し、感染持続期間が延長する。
- SEへの感受性が増加する。
通常給餌の鶏への感染には50万ケの菌数が必要であるが、換羽鶏へ感染させるには10個以下の菌で可能。また、感染による伝播のスピードも早い。
- これまでの制限給餌による方法に代えて、SE問題に対応する(強制)換羽の方法として a)スキップフィード法 b)換羽飼料給餌法 c)低栄養、低エネルギー飼料給餌法などが考案され、いづれの方法においても、SEの感染防禦面での効果が大きかった。
- サルモネラワクチンの効果について(試験結果)
- 生ワクチン接種群の感染攻撃後3日目の伝播は非常に緩かで30羽中3羽だけの感染に対し、ワクチン無接種群では攻撃後3日で87%の鶏に感染した。
- ワクチン無接種群では卵巣のSE陽性率が高い(80%以上)のに対して、ワクチン接種群では全て陰性であった。
- 動物福祉問題と(強制)換羽について
- アメリカのマクドナルドとバーガーキングは、(強制)換羽を実施した鶏群からの仕入れは中止の予定。
- 技術用語としての(強制)換羽については、刺激的な表現を避けるため、導入換羽又は換羽導入との表現にすべきではないか。
注 |
- 当該内容はシンポジウムを聴講して、(社)日本養鶏協会事務局の理解のもとに独自に作成したものである。〔 〕部分は、(社)日本養鶏協会が挿入。
- このため、講演者本人の趣旨、意図と齟齬(そご)をきたす可能性があることは予めご了解願いたい。
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文責:社団法人 日本養鶏協会事務局 |
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参考: |
J・R・Cテクニカルシンポジウムとは、(株)ジェイ・アール・シー (代表取締役 斉藤太洋)による養鶏技術に関する幅広い勉強会を無料にて定期的に実施しているものである。
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