協会概要

平成21年度 事業報告

 平成20年秋のリーマンブラザーズ破綻に端を発する国際的な金融恐慌・経済不安により世界的な景気後退局面となり、全面的なデフレスパイラル状態となった。このため国内においても全ての商品の消費が減退し価格も低迷したことから卵価についても同様に極めて厳しい展開となっている。こうしたなか昨年の8月の衆議院選挙の結果、政権が交代したこと等から我が業界を含めた全産業分野において大きな変化が生じるとともに、この対応が強く求められるところとなった。以上を踏まえて当該年度の事業課題を概括的に見ると以下のとおりであった。

1 飼料価格等生産資材対策

 飼料価格については平成18年秋以降のバイオエタノール問題により飼料価格の異常高騰の後、平成20年のリーマンブラザーズ破綻に伴う金融不安により投機的資金が急速に収縮したことから、飼料原材料価格も急速に低下し、異常高騰前の価格までは戻るまでには至っていないが小康状態となった。
 しかし、飼料価格が鶏卵コストの6割以上を占めることから、鶏卵産業の安定的発展を期するため、(般)日本鶏卵生産者協会が先頭に立って取り組んでいる海外において広く使用されている飼料用麦(規格外)のトウモロコシ並み利用の自由化を実現するため関係する制度改正等を農林水産省等への働きかけを行なった。又、国土資源・国内資源の有効活用、飼料原材料多様化の観点から飼料用米の利用促進について各方面に働きかけを行った結果、政権交代もあり積極的に国としても取り組むこととなった。

2 中小養鶏生産者対策

 最近のデフレスパイラルという厳しい経済情勢の中で、鶏卵については需給ギャップが拡大し卵価の低迷が続き、22年1月には卵価安定基金の財源が枯渇し特に中小生産者にとっては極めて厳しい状況となった。
 こうした情勢を踏まえ、鶏卵需給安定強化特別対策事業を活用して、地域の鶏卵の需給動向を中心とした生産の推進についての意見交換の場を設け、全国5ブロックで各2回開催した。更にこれらのブロック会議の意見・内容を集約し、中央推進会議を東京で2回開催するとともに、この内容で整理・集約し農林水産省主催の全国鶏卵需給連絡会議等で生産者の意見として表明した。特にセーフティネットとして重要な役割を果す卵価安定基金への一層の支援、中小規模を中心とした卵価基金制度の運用、飼料価格高騰及び大幅変動に弾力的に対応するため、飼料原材料であるトウモロコシに加えて飼料用米、麦(規格外)の利用を生産者が主体的に選択できるように(般)日本鶏卵生産者協会を中心に制度の運用と規制の緩和を求めて関係方面に要望した。

3 鳥インフルエンザ問題

 我が業界における重要な関心事である高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)の平成21年度の国内発生はなく、昨年2月に愛知県下で発生したウズラの弱毒型高病原性鳥インフルエンザの発生事例についても、その後新たな拡大はなく5月にはすべての移動制限が解除された。
 鳥インフルエンザの発生に伴う殺処分や移動制限措置は、周辺の養鶏関係者に甚大な影響を与えることになることから、海外においては既に実用化・普及している迅速診断法としてのリアルタイムPCR法を我が国にも導入し移動制限等による流通混乱を最小限にすることを目的に、農林水産省消費・安全局長に(般)日本鶏卵生産者協会との連名で要請書を提出した。この結果国はこの導入の方向に向けての取り組みを行なうこととなった。
 また、家畜防疫互助事業による第三期の互助基金事業(平成18年度~20年度)が終了し、現在第四期事業(平成21年度~23年度)となっている。対象家畜についても新たにウズラを対象に加え、加入方式についても企業型・家族型の2種類の加入形態として加入促進を働きかけ現在に至っている。

4 鶏卵公正取引協議会の設立

 平成21年3月公正取引委員会による「鶏卵の表示に関する公正競争規約」の認定・官報告示を受け、同規約に基づき同年6月に鶏卵公正取引協議会が設立された。設立時会員は約180社の参加であった。次いで平成22年3月には当該規約は完全施行となり、会員証紙(公正マーク)の審査受付を開始した。
 本規約は生鮮食品としては初めての公正競争規約となること及び規約内容を広く啓発する観点から、農畜産業振興機構の助成を受け生産者向けの「鶏卵の表示ハンドブック」を作成し、全国配布を行なった。
 また、本協議会は本会の事業活動とも極めて密接に関連するとともに、今後の我が国鶏卵産業に果す役割も極めて大であることから、本会役員複数名を当該協議会の役員及び審査委員会等の委員として派遣した。

5 組織改革問題

 主要な養鶏生産者団体として本会と(般)日本鶏卵生産者協会があり、両団体の業務が重なり、共通の課題も多いとして組織改革の必要性が求められている。本件についてはこれまでも中央・地方段階を含め長年検討してきたが成案を得るまでには至っていない。
 こうした検討状況を打開するため、本年度2度にわたり開催した本会の組織・財政検討委員会において検討・集約された新組織の結成が必要であるとし、その主な内容は以下のとおりである。
※全国の養鶏生産者を統轄する中核的生産者団体(新設)に統合・再編する

6 アニマルウェルフェア問題

 アニマルウェルフェア問題の展開はこの内容いかんによっては今後の我が国養鶏産業にも甚大な影響を与えることとなる。このため本会役員及び事務局が参画して(社)畜産技術協会の「アニマルウェルフェアの考え方に対応した採卵鶏の飼養管理指針」策定に協力した。
 この内容等については、日鶏情報に掲載して会員団体に周知を図ると共に、本会の鶏病・アニマルウェルフェア対策委員会を開催し、農林水産省担当官との意見交換を行うことにより、このことの重要性について一層の理解醸成に努めた。

7 鶏卵の消費促進対策

 一昨年来の国際的な景気後退の影響を受け、デフレスパイラル傾向に入っていることから、鶏卵についても厳しい消費減退傾向となってきた。このことからこれまで以上に消費の維持・拡大対策が必要となった。また、特に最近の少子化に伴う人口減及び若年層における鶏卵消費が極めて少ないことから、中長期視点に立っての若年層への消費対策、啓発活動に取り組むこととした。このため本会の消費促進問題検討委員会を中心に小学校低学年向けのDVDソフト教材「タマゴってなんかいいね」を3,000枚制作し会員及び教育関係機関等に配布した。
 この他、例年実施している消費者の理解を深めるための各種消費促進用パンフレットの作制、イベント用パネルの作制及び各県協会が行なう消費促進関係のイベント等についても積極的に支援した。
   また(財)日本農林漁業振興会主催の平成21年度実りのフェスティバル(農林水産業啓発展、地域農林水産展 於:有明ビッグサイト)に参加し、鶏卵の消費促進のためのパネル展示及び鶏卵の消費促進用に作制した上記DVDを本会ブース内で常時放映することにより広報に務めた。同時に約2,000名の来場者に鶏卵の消費促進に係るアンケート調査も行った。
 また消費者の関心の高いコレステロール問題については、これまでに引き続いて(般)日本鶏卵生産者協会と連携して、コレステロール国際フォーラムを、米国のD・J・マクナマラ博士を招聘し国内の学者の参加も得て全国3ヵ所で開催し、消費者・医師・栄養士などを対象者としての啓発活動を行なった。
 印刷物としてはNHK“きょうの料理”のテキスト(公称80万部)に専門家に依頼・作成した鶏卵とコレステロールの誤った知識の是正を図るため啓発記事を掲載した。
 更に最近の、鶏卵の賞味期限表示の合理性について消費者・マスコミ等の関心が急速な高まり、これに対応するため「鶏卵の日付等表示マニュアル改訂委員会」を設置し、賞味期限の起算日をこれまで以上により明確に産卵日とし、家庭で生食用として消費される鶏卵については産卵日を起点に21日以内とする、「鶏卵の日付等表示マニュアル改訂版」を策定・配布した。
 なお、このことは今年3月に完全施行となった鶏卵の表示に関する公正競争規約に基づく、表示内容の審査との整合性及びその合理性とも密接に関係するものである。

8 国際養鶏・養豚産業展(IPPS)の開催

 平成21年7月8~10日に名古屋市ポートメッセなごやにおいて本会、(社)日本養豚協会及び(社)中央畜産会の共催で開催した。平成16年に我が国においては79年ぶりの発生となる高病原性鳥インフルエンザの関係で一時開催を中断していたことから、平成12年以来の8年ぶりの開催となった。このため会期中の登録入場者数は7,112人、延べ15,900人以上となり、多くの養鶏・養豚関係者が訪れ最新の養鶏関係機具・器械を観察できた。
 また、昨年1月以降の国内外における新型インフルエンザ(H1N1)の発生(パンデミック)や高病原性鳥インフルエンザ(H5N1)への懸念等から風評被害も心配されるなかでの開催であったため、会場の衛生対策を重視することとして展示会場入り口では靴底・手指の消毒とエアシャワーの設備を配置して防疫対策に最大限の配慮を行なった。

9 情報提供活動

 養鶏業界は農業・畜産の中でも特に情報の収集・分析に関心の高い業界である。
  このため、本会のホームページ、Fax等を活用し、関係情報の迅速な提供に努めるとともに、本会機関紙の日鶏情報を積極的に活用して関係情報の提供に努めた。

10 農政活動

 高病原性鳥インフルエンザ問題、飼料用麦(規格外)のトウモロコシ並みの利用自由化等について国、行政等に対して(般)日本鶏卵生産者協会を中心に積極的な働きかけを行なった。

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