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平成20年度 事業報告

 平成20年度における業界内の最大の出来事は、18年度第3四半期以降連続的に上昇を続けた飼料原材料価格による大幅なコスト高及び20年度秋以降に始まった国際的な金融恐慌・経済不安により鶏卵を含めた全ての商品の消費減退に振り回され、養鶏経営は未曾有の危機的状況に立ち至ったことである。  当該年度の事業課題を概括的に見ると以下のとおりであった。

1 飼料価格高騰問題

 一昨年来のバイオエタノール問題に端を発する飼料価格高騰は、20年度においても引き続き上昇を続け、配合飼料価格は18年10月に比べて20年10月には累計22.2千円/tの上昇となり、飼料費がコストの約6割を占める鶏卵業界においては、正に個人による経営努力では解決困難な状況に至った。
 このため、業界団体としては行政・国会等に働きかけること等により価格差補填機能を有する配合飼料価格安定基金財源の安定的確保を強く要請した。
 これにより、当該価格安定基金関係財源として計450億円を確保することができた。
 一方、昨年秋以降においては、世界的な金融恐慌により、穀物のシカゴ相場及び海上運賃が大幅下落となり、ピーク時の20年10月に比べて、12千円/tの値下げの56千円/tとなったが、価格上昇が始まった18年10月(42.6千円/t)に比べ、まだ13.4千円/tも高い状態であり引続き厳しい状況に大きな変化はない。

2 中小養鶏生産者対策

 鶏卵の計画生産廃止に伴ない、鶏卵需要の変動及び生産資材価格の上昇による影響は、経営規模が小さく、又、資金力も弱い中小規模の生産者に特に強く現れること等から、この支援に向けての取組みを行なった。  特に、飼料価格高騰対策としては配合飼料価格安定基金財源の大幅な拡充及び卵価安定基金の基準価格が重要となるが、この改定に当たっては20年度において高位水準(19年166円/kg→20年4月185円/kg→20年7月191円/kgと無事戻し)を確保することができたが、更に引続き、21年度基準価格についても関係の機関等に働きかけることにより同様に同額の191円/kgを達成することができた。
 また、年度末に官報告示された鶏卵の公正競争規約の策定過程においても、中小規模生産者の特徴あるブランド卵生産を支援するための内容を競争規約内に位置付けすることができた。

3 鳥インフルエンザ問題

 平成16年に我が国では79年ぶりの高病原性鳥インフルエンザが発生して以来、これまでに既に7県に及ぶ発生となっていたが、本年度は新たに21年2月以来愛知県下でウズラにおいて弱毒型高病原性鳥インフルエンザ(H7N6)に7件約150万羽が汚染群となる等の大規模な発生をみることとなった。
 鳥インフルエンザについては、カモ→ウズラ・七面鳥→鶏による感染経路が最も危険度が高くなることから、養鶏関係者に対しこの事実の認定・対応等についての啓発に努め。
 また、併せて本会が現在実施している鳥インフルエンザに係る互助基金については従前は鶏のみを対象としていたが、21年度から新たに開始する第4期(21年度~23年度)についてはウズラをこの対象範囲に加えることとし、本会が同様に取組むこととしての調整を完了した。

4 組織改革問題

 現在、主たる生産者団体として本会と日本鶏卵生産者協会がある。
 両団体の組織形態及び歴史には違いがあるものの、少なからず共通する事業があり、又、会費賦課問題等もあることから、両団体間の役割調整を図る必要があるとされ、かつ、このため本会の組織改革が必要であるとされてきた。  しかしながら、本件については、全国各地域段階においては未だ十分なコンセンサスを得るまでには至っていないことから引続き成案を目指しての検討を進めることとされた。

5 アニマルウエルフェア(動物福祉)問題

 アニマルウエルフェア問題については、既にEUにおいてEU指令により2012年には従前のケージによる鶏の飼育は法的にも禁止されることとなっている。
 この対応のため、米国においては米国鶏卵生産者協会(UEP)が米国農務省(USDA)等の協力を得て自主的なアニマルウエルフェアの認証基準を設けて取組んできたところである。
 しかしながら、米国内のアニマルウエルフェア団体及び菜食主義者(ベジタリアン)が中心となり大規模なロビースト活動を行い、昨年11月カリフォルニア州において実施された住民投票においては2:1の大差で生産者側の敗北となった。
 こうした動きに対応して、国内においても(社)畜産技術協会が中心となり我が国としてのアニマルウエルフェアのガイドラインを本年度内に策定することとして関係者により構成する委員会において検討を進めてきた。  本会としても、この策定のための調査用アンケートの作成、送付、回収、分析等を行なうのみならず、本委員会にも毎回オブザーバーとして参加し、必要に応じて養鶏生産者団体としての立場からの意見・見解を述べ、過度な規制内容のガイドラインとはならないように最大限の配慮に努めた。

6 鶏卵の消費促進対策

 鶏卵の消費促進対策を長期的視点から取組むこととし、これに係る各種パンフレットの作成・配布に努めた。
 又、例年に引続き、従前における鶏卵の消費拡大において最大の障害とされたコレステロール問題を論理的に解決するため、日本鶏卵生産者協会と連携して、コレステロール国際フォーラムを開催し、米国のD・J・マクナマラ博士を招聘するとともに国内の関係する学者の参加も得て全国5ヵ所において医師・栄養士・消費者を主な対象者としてこの啓発活動に努めた。
 また、各県養鶏協会が実施する鶏卵の消費促進に係る各種イベントにも積極的な支援を行なった。

7 鶏卵公正取引協議会の設立

 平成16年11月公正取引委員会から鶏卵についての公正競争規約制定の要請を受け、以後、関係業界団体と公正取引協議会設立準備会等を設け、約4年に亘り規約案の検討・調整を進め、昨年6月25日に公正取引委員会指導の下に(社)全国公正取引協議会連合会主催の鶏卵に係る表示連絡会を開催し、消費者、流通関係団体の意見を聴くとともに、本年1月26日には公正取引委員会主催による本件に係る公聴会が開催され、次いで本年3月26日に本規約案が認定され、翌27日には官報告示された。
 以上のこと等から、本規約の運営主体となる鶏卵公正取引協議会の早急な設立が必要となった。

8 情報提供活動

 畜産の中における養鶏部門は、他の畜種に比べて関係する情報の迅速なる収集・分析が極めて重要となっている。
 このため、本会のホームページ、FAX、日鶏情報等を積極的に活用してこの対応に努めた。

9 国際養鶏・養豚産業展(IPPS)の開催

 平成16年の山口県下において高病原性鳥インフルエンザが発生したことにより、本病防疫上の観点から、本産業展は一時開催を中断してきた。
 しかしながら、関係業界から開催についての強い要望もあり、防疫対策には十分留意しつつ開催することとして、21年7月8~10日に名古屋市において(社)中央畜産会の主催で開催することとし、現在、本会も参画してこの準備作業を進めている。

10 農政活動

 各種の養鶏関係の重要課題を解決していくため、欧米においてはロビースト活動が積極的に行なわれている。
 このため本会においても主として、日本鶏卵生産者協会が中心に実施している国、行政等への各種の働きかけ等について側面的な支援を行なった。

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