協会概要

平成19年度 事業報告

 平成19年度においては、バイオエタノール生産向け需要増を背景としたとうもろこしのシカゴ相場の上昇等に伴う飼料価格の高騰は、輸入穀物への依存度の高い養鶏経営を大きく圧迫をするとともに、約30年に亘り行政主導により実施してきた計画生産の廃止等に伴う鶏卵需給の大幅な緩和と卵価の低迷により、養鶏経営は極めて厳しい状況下に置かれることとなった。当該年度の各事業課題を概括的に見ると以下の通りである。

1 高病原性鳥インフルエンザ問題

 平成16年に山口県下で79年ぶりに高病原性鳥インフルエンザが発生して以来、平成17年の茨城県下を中心とした弱毒タイプの発生、昨年1月の宮崎県下及び岡山県下の発生により既に7県に及ぶ本病発生となっている。幸いそれ以降の本病の発生は見られないものの、本年4月以降韓国では全国的な本病(H5N1)の連続的発生や、本年4月以降の秋田県及び北海道下でのへい死白鳥から同様に本病ウイルス(H5N1)が検出されたこと等から本病についてはこれまでの冬季を中心とする対応のみならず季節的なズレにも留意した各種対策及び取組みの必要性を認識させられることとなった。
 本会としては本病についての正しい知識及び情報提供に努めることによる啓発活動を通じて養鶏関係者を含めての過剰反応及び不安感増大の回避に努めた。
 主なものとしては日本鶏卵生産者協会との共同開催により、国内外の鳥インフルエンザ問題の専門家(小澤義博博士:国際獣疫事務局名誉顧問、イラリア・カプア博士:イタリア国立ベネチア家畜衛生研究所、レスリー・デービッド・シムズ博士:FAOコンサルタント)を招聘し国際シンポジウムを開催した。
 また、本病の人感染問題については偏った情報発信がなされているため、マスコミ報道を追跡・ウォッチした。特に、本年1月NHKテレビ報道にも同様傾向の報道がなされたことから、適正報道について生産者団体としての要望書を提出した。

2 飼料価格高騰問題

 昨年来のバイオエタノール問題に端を発する飼料価格高騰問題は養鶏をはじめとする畜産経営問題に限らず、広く食料価格高騰問題にも波及し大きな社会問題となってきている。特に養鶏経営においては飼料代が生産コストの約6割を占めることから、この急激な価格上昇は生産者によるコスト削減努力の域を超えていることから、生産物価格への上乗せを呼びかけるとともに、需給に見合った生産・供給の必要性を各種会合を通じて働きかけ、併せて国に対しても本件に係る卵価安定基金及び融資支援措置の働きかけを行った。
 また、2月にはこの問題を広く関係方面に訴えるために日本鶏卵生産者協会が主体的に行った全国生産者大会を後援した。

3 中小生産者対策問題

 バイオエタノール問題に端を発する配合飼料価格の高騰及び、約30年に亘り行政主導により実施してきた計画生産の廃止等に伴う鶏卵需給の緩和と卵価の低迷の影響を特に強く受ける中小生産者に対する経営対策の強化が強く求められるため、日本鶏卵生産者協会と連携し、特に大規模生産者に対して自主的な繰上げとう汰等を呼びかけ鶏卵需給の改善に努めた。
 更に、配合飼料価格の高騰に伴う生産コストの上昇及び卵価の低迷の影響を緩和するため、日本鶏卵生産者協会と共同で、家畜飼料特別支援資金制度の充実・強化、卵価安定基金補てん基準価格の期中改定及び国費補助部分の中小生産者への傾斜配分、また配合飼料価格安定基金財源の充実・強化につき農林水産省、関係国会議員に対して要請活動を行った。
 この結果3月には、自民党畜産酪農対策小委員会において、卵価安定基金補てん基準価格については19円アップの185円と大幅アップのみならず期中改定をも含むとされ大きな成果が得られた。

4 本会組織改革問題

 養鶏業界は、(1)鳥インフルエンザ問題、(2)飼料価格高騰問題、(3)鶏卵の需給緩和問題、(4)卵価問題、(5)鶏卵の消費の維持・拡大対策、(6)アニマルウェルフェア問題への対応、(7)サルモネラ対策、(8)鶏卵の公正競争規約策定への対応など多くの取組むべき課題が山積している。
 このため、平成17年度より養鶏業界を巡る諸課題に機動的に対処するため、現行の組織の見直しを行なうこととし、このための組織改革案については数次に亘り総会に提出し、引続き本会及び日本鶏卵生産者協会と共同で検討を行ってきた。
 一方、内閣府行政改革推進本部より公益法人制度の見直しが進められ、本年12月より新たな公益法人制度がスタートすることとなっている。この公益法人の新制度に対応するため、見直しの方向を従来の中央団体のみによる連合体組織から、新たに地域会員も設け、各県養鶏協会とも連携する組織改革案に修正して改めて検討を行った。
 この検討案については、正副会長会議を中心とした検討のほか、地域における各県養鶏協会の意見を聴取するため、各ブロック毎に本件について各県生産者も参加しての地域協議会を開催して、各地域の組織改革問題に対する意見等の聴取を行った。
 その結果、現行案の早期実施については少なからず批判的な意見もあることから、なお引続き検討を進めることとした。

5 鶏卵の消費促進事業関係

 約30年に亘り継続してきた国の行政主導による鶏卵の計画生産が平成16年4月に廃止され、養鶏生産者の自主的判断による鶏卵生産に移行したことから、生産者間の競争が激化し、特にこの傾向が最大市場である関東地域において激しいものとなり、以下の通り東京相場が九州相場をも下回る異常な卵価情勢状況となった。

平成19年度鶏卵相場の推移(全農M、円/kg)

市場

19年4月

5

6

7

8

9

10

11

12

20.1

2

3

東京

168

168

154

145

157

166

170

175

186

135

190

195

福岡

178

173

156

146

165

178

188

195

205

141

199

205

 この対策としては、当面する飼料価格高騰対策、卵価安定基金の運用対策がもとより重要であるが、同時に消費拡大対策も引き続き重要となる。
 このため、近年の“食の安全・安心”への関心の高まりに対応し、鶏卵の消費者への理解を醸成するため、各県養鶏協会が行う消費促進関係のイベント等を積極的に支援した。
 また、鶏卵の消費拡大において長年に亘り大きな課題であったコレステロール問題については昨年度に引き続き米国鶏卵栄養センター所長のD.J.マクナマラ博士の招聘及び国内学者等により日本鶏卵生産者協会と共同で全国5ヶ所における鶏卵とコレステロールに関するフォーラム等を開催し鶏卵についての正しい知識を一般消費者に普及するための啓発活動を行った。
 これらの成果等により、最近はコレステロール値は高くても心配ない等の新聞報道がなされるようになった。

6 アニマルウェルフェア(動物福祉)問題

 動物福祉問題については、将来のわが国養鶏産業に大きな影響を及ぼすことが考えられることから、既にこの影響を強く受け、かつ既に先進的な取組みを行っているEU等の海外の実情を把握し、今後わが国におけるこの問題への取組みに活かすため、日本鶏卵生産者協会と共同で英国鶏卵産業協会事務局長マーク・ウイリアム氏を招聘し、国際セミナーを開催した。
 また、国が進める動物福祉に係る指針の策定に的確に対応するため、(社)畜産技術協会が実施するアニマルウェルフェアに関する実態調査のための全国アンケート調査内容の作成・送付、集計・分析を主体的に支援した。

7 鳥インフルエンザ生産者互助基金への対応

 平成16年12月より国の1/2の補助を受けて開始された第2期の家畜防疫互助基金については、茨城県下を中心とする大規模かつ連続的な本病(弱毒型)の発生により、当初互助金の所要額は最大で17.5億円と見込まれ、基金額との大きな乖離が生じる事態となった。しかし、コンプライアンス問題もあり、その後関係機関、交付対象者等との協議を重ねた結果、追加積立を行うことにより交付財源を確保し、最終的に総額14.8億円の互助金を交付して終結した。
 第3期(平成18~20年度)については、採卵成鶏(4円/羽→6円/羽)と育成鶏(2円/羽→3円/羽)の生産者積立金単価が大幅に引き上げられた。一方、互助金の交付方法が従来の定額方式から限度額方式に変更になったことから、交付対象者等への十分な説明を行うとともに、生産者の不利益とならないよう最大限の配慮を行いつつ取組んだ。

8 鶏卵の公正競争規約の策定

 現在、1,000を超えるとされるブランド卵の表示を巡っては、様々な強調表示がなされ消費者に優良誤認を与える恐れがあるとして、公正取引委員会より平成16年11月に公正競争規約の設定に向けての指導勧告文書が養鶏業界に出されているところである。
 このため、以後養鶏関係団体により専門委員会を設け規約案の案文策定を進めるとともに公正取引委員会との調整を行い、本会内に国産鶏卵公正取引協議会(仮称)事務局を設立し、この問題に主体的に取組んできたところである。
 これまで専門委員会により作成された「鶏卵の表示に関する公正競争規約(案)及び施行規則(案)」については、適宜、各県養鶏協会等を通じての情報提供に努めるとともに各種会合において説明及び意見聴取に努めた。  この結果、規約案の内容調整については概ね最終段階に入りつつある現況にある。

9 農政活動問題

 これまで養鶏業界は、他の農業・畜産分野に比較して農政活動には殆んど取組みがなされてこなかったが、鳥インフルエンザ問題、配合飼料価格の高騰問題、卵価問題等緊急に解決すべき課題が山積していることから昨年に引き続き日本鶏卵生産者協会と協調して農政活動についても一定の取組みを行ってきた。

10 情報提供活動

 平成13年8月に開始したパソコン、携帯電話(i-モード)による本会ホームページを活用して鳥インフルエンザ問題をはじめとする各種養鶏関係情報の迅速な提供に努めた。
 これにより、平成20年5月15日現在のアクセス数は566千件となり、これによる一般消費者等からの問い合わせも多く寄せられていることから、養鶏関係者のみならず、広く養鶏関係の情報源として活用されている実態に対応して、引続き情報提供内容の一層の充実・強化が求められることとなる。

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