協会概要

平成18年度 事業報告

 平成18年度については、平成19年1月に宮崎・岡山の両県下において高病原性鳥インフルエンザが発生し、改めて本病の養鶏産業界に与える影響の大きさを再認識させる結果となった。当該年度の各事業課題を概括的にみると以下の通りである。

1.高病原性鳥インフルエンザ問題

 79年ぶりの発生とされた平成16年1月の山口県下における本病発生以来、既に7県に亘りほぼ毎年に近い発生となっており、欧米の本病専門家による見解と同様に、一旦本病の発生をみると数年に亘り発生が継続するとの助言と同様の結果となった。  このため、残念ながら本病については今後共引き続き発生が十分に起り得るとの想定の下に各種の対策及び取組みを推進していくことが必要となった。
 更に、今般の宮崎県及び岡山県における本病の発生と当該県及び地域における防疫措置の対応には大きな違いがみられる結果となった。
 特に、岡山県下の発生事例においては、これに伴なう移動制限による鶏卵の移動制限解除は実質的に3~4日間と極めて短期間であった一方、宮崎県下の発生事例の3件、特に初発事例については2~3週間にも及ぶ鶏卵の移動制限があったとされ、県間及び県内間での対応及びこの経営に及ぼす影響には大きな差が生じたとされている。
 このため、本会としても引続き国等との調整を進めるとともに養鶏関係者の被害・損失の最小化に努めるとともにこの整一化を図ることの必要性が改めて痛感させられる結果となった。
 平成16年以降における以上の展開を踏まえ、本会としては日本鶏卵生産者協会と連携を取り国に対し数次に亘り対策強化の要望書を提出するとともに、自民党鳥インフルエンザ対策本部に出席し業界の実情を説明し要請・働きかけを続けた。同時に会長は農林水産省の家畜衛生部会に出席・発言し本病対策の改善を求めた。  同時に本病についての大きな問題点の1つとされる人感染問題等マスコミ等による風評被害発生対策が必要であるため、これまでも国・生産者団体共にこの対策に取り組んできたところである。しかしながら、一部には未だ週刊誌等による風評被害が公的な立場にある人物も利用されてふりまかれ、これに対する生産者の抗議集会が行われたが、今後共引き続き風評被害対策に取組むことが必要となった。

2.鳥インフルエンザ生産者互助基金問題

(1)平成16年12月から養鶏も国の1/2補助を受けることにより、既に牛・豚で実施してきた家畜防疫互助基金の第2期(1期3年)に中途参入の形での実施となり現在に至っている。
 第2期においては茨城県下の大規模な本病発生(H5N2、弱毒型)により所要額は最大で17.5億円が見込まれ、保有財源12.5億円とは大きく乖離する実態となった。
 このため、本件についてはコンプライアンス問題、追加徴収問題等があるため引続き検討を進めつつ対応することとする。

(2)平成18年4月から第3期の生産者互助基金が開始となったが、採卵成鶏・育成鶏の生産者積立金単価が大幅に引上げられた(成鶏 4円/羽→6円/羽、育成鶏 2円/羽→3円/羽)ことから互助金積立額総額としては(737百万円)と第2期(627百万円)を上回ったものの、加入者数については大きく減少することとなった。

(単位:戸、羽、円)

 

採卵成鶏

採卵育成鶏

その他

合 計

戸数

 

戸数

 

戸数

 

戸数

 

羽数

積立金

羽数

積立金

羽数

積立金

羽数

積立金

第3期①
(A+B)

1,182

 

560

 

1,892

 

(実) 2,957

 

95,049,001

570,294,006

27,875,010

83,625,030

107,263,125

88,261,244

230,187,136

742,180,280

第2期

1,879

 

922

 

2,124

 

(実) 3,870

 

115,491,263

461,965,052

32,873,184

65,746,368

114,816,350

99,336,212

263,180,797

627,047,632

①÷②(%)

62.9

 

60.7

 

89.1

 

76.4

 

82.3

123.4

84.8

127.2

93.4

88.9

87.5

118.4

注:(1)平成19年3月31日 現在   (2)鶏の種類による重複加入のため内数と計とは必ずしも一致しない。

なお、第2期・第3期の生産者互助基金間は基金相互の交流は特にないため、第2期における不足問題が今回の宮崎・岡山両県下の本病発生により財源不足の見込みとなる現況にはない。

3.本会組織改革問題

 本会の組織改革問題は、本会の組織対策委員会及び日本鶏卵生産者協会の組織関係委員会との合同委員会等による検討を進め、既に従前の総会資料に提出している内容での組織改革案を提示し、この実現に向けての取組みを進めているところである。  こうした中、本年2月、農林水産省から公益法人の改革に係る行政改革推進本部事務局の公益法人制度改革の概要が農林水産省所管団体を招集し一斉に提示された。これにより平成20年12月を境に従前の主務官庁による公益法人は廃止となる内容の法律が施行となるため、同時にこの内容・方針を踏まえての組織改革を進めることが必要となっている。

4.鶏卵の需給問題及び鶏卵の生産指針

 昭和49年度から約30年に亘り継続してきた国の行政主導による鶏卵の計画生産は平成16年4月に廃止され、鶏卵生産者の主体的判断による鶏卵生産に移行し現在に至っている。
 こうした中、鳥インフルエンザによる影響の問題はあるものの一部地域においては大型の鶏舎等の鶏卵関係施設の建設等の動きが見られることから、基本的には生産供給過剰基調で展開する状況となった。
 一方、バイオエタノール生産の関係から今後、配合飼料価格が明らかに上昇基調となったことから、生産コスト上昇と出荷先からの選別に耐え切れない中小生産者が苦悩している実態が見られ始めている。
 以上の状況の中、茨城県を中心とする鳥インフルエンザ発生の影響の鶏卵価格への影響がみられるが、平成17年前半は高卵価で推移したことから平成18年前半については、相対的に対前年比で大きく下回ることとなり、結果的には年平均では21円安となった。

単位:円/㎏

年月

H18.1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

11

12

年計

H19.1

2

3

対前年同月比増  減

▲51

▲82

▲86

▲55

▲38

▲22

▲2

13

12

14

19

27

▲21

2

3

2

注:全農M卸売価格

5.鶏卵の消費促進事業関係

 高病原性鳥インフルエンザの発生に伴なう風評被害、特に“食の安全・安心”への不安感を軽減するため、消費者との“顔の見える関係づくり”を始めとする各種会合の開催・参加及び印刷物の作成・配布等により取組んできたところである。
 また、鶏卵について長年に亘り大きな課題であったコレステロール問題については昨年度から米国鶏卵栄養センタ-所長のD.J.マクナマラ博士を招聘し各ブロック毎に大規模な国際フォーラムを開催した。
 これらの成果等により平成18年11月には、厚生労働省の研究グループから鶏卵と心筋梗塞とは特に関係なしとする調査結果が発表されるとともに、本年3月には日本動脈硬化学会が動脈硬化性疾患の診療指針におけるコレステロール値について、4月にはこれまでの総コレステロール値によることを止め、悪玉コレステロール値を原則として判断基準と改定する旨の新聞報道がなされる等、一定の成果が現れつつある現状にある。
 更に、サルモネラ食中毒問題対策として一般消費者啓発用パンフレットを3万部作成・配布して広く食中毒対策についての正しい知識の普及に努めた。

6.中小生産者対策問題

 昭和49年から約30年に亘り行政主導により実施してきた鶏卵の計画生産が平成16年4月をもって廃止となり、その後は生産者の主体的な判断に基づく鶏卵生産に移行し現在に至っている。
 しかしながら、鶏卵生産の規模拡大・増羽については公的な規制がなくなったことから、競争原理に基づく地域における大規模な生産拡大が散見される現況となり規模の大小を問わず増羽問題は大きな関心事となってきた。
 このため、平成18年12月には農林水産省に対して中小生産者に配慮した鶏卵価格安定基金の運用、共同GPセンター設置事業の採択要件の緩和、余剰鶏卵専門の仲介組織(日本版ECI)の設立支援等を要請した。

7.鶏卵の公正競争規約の策定

 ブランド卵については様々な強調表示がされることにより消費者に誤認(優良誤認)させる恐れがあるとして不当表示防止法の観点から、公正取引委員会から平成16年11月に鶏卵についての公正競争規約の設定に向けての指導文書が出されているところである。
 このため、養鶏関係団体による専門委員会により規約案の案文作成を進め、内容等について既に公正取引委員会と第5次に亘り検討・調整を行ってきているところであり、本年中の公正競争規約の成立に向けての作業段階に入っている。
 なお、本規約案策定においては特に重点をおき検討・留意している事項に中小生産者の経営安定対策がある。
 この観点から放し飼い・地玉子・有精卵等の中小生産者が特に取組み易く、差別化のための飼育法も対象となる方向での規約案の作成・検討を進めている。

8.農政活動問題

 これまで養鶏産業界は、他の農業・畜産分野に比較して農政活動には殆んど取組みがなされてこなかった。
 鳥インフルエンザ問題を始め、養鶏産業界には各種の解決すべき大きな課題が有ることから、昨年度に引き続き農政活動についても一定の取組みを実施したところである。

9.情報提供活動

 平成13年8月に開始したパソコン、携帯電話(i-モード)による本会ホームページを活用して、鳥インフルエンザ、サルモネラ、コレステロール等の各種問題についての養鶏関係情報の迅速なる提供に努めた。
 これにより、平成19年5月15日現在、528千件のアクセス数となり、養鶏関係者、報道関係者、一般消費者の養鶏関係情報源の一つとして本会ホームページが有効に活用されていることが推察される。

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