生卵を割って卵黄上表面の胚盤の状態で判断する
有精卵は条件が整えば雛がかえる卵であり、生命を宿しているという点において無精卵とは決定的な違いがあります。孵卵器に入卵しますと有精卵の場合胚が発育して24時間前後で血液環を生じ、次に血管が網目状に現れてきますので、この方法によって無精卵と見分けることができます。孵卵5~7日目ともなりますと、暗室内で光をあてて卵内部を透視することにより、全体的にやや赤みを帯び卵黄に黒点や放射状の血管が認められる有精卵と、卵黄がやや暗いほかには全体が明るくみえる無精卵とに、外から区別できるようにもなります。しかし、この方法はあくまでも実験的に行われる判別法であり実用になりません。
ところが、産みたての新鮮卵でも有精卵には胚盤の変化が認められるのです。すなわち、受精後産卵までに10数時間以上も卵管内に滞留するため、その間に胚の卵胞分割が開始されているのです。胚盤の変化を認めないものは無精卵です。卵黄を破らないように注意して生卵を割ります。卵黄の上表面中央付近に円くて白っぽい胚盤があります。有精卵の場合、その直径は約3.5mmで円形をしていて、周囲が白濁した部分による明瞭な環状を呈し、その内側は透明のため卵黄色であり、中心部にぽつんと点状の白濁が認められます。これに対し無精卵の胚盤はいわゆる白斑とよぶのにふさわしいもので、形は円形がひずんでいて、有精卵と比べて輪郭は明確さを欠き大部分が白濁し、直径もひとまわり小さいものです。
また、精子の存在とかそれの侵入に伴う生化学的変化などによる成分の変動は考えられないこともないと思われますが、実際に卵の成分を分析して有精卵と無精卵を見分ける方法はみいだされていません。